中国家郷菜 三希房

坂野 秀起  店主 料理長


広大な中国各地に伝わる郷土料理、屋台料理、家庭料理を食べ尽くした料理長が、アレンジを加えないようにしながらも、より洗練された味をお届けしたいとオープンさせた三希房。
価格はリーズナブルながら、中華料理屋と一言で片付けるにはもったいない程の丁寧な仕事をみせてくれる。一面が床から天井までの大きな窓ガラスで囲まれた店内は、広々とした空間を作り、堀炬燵となったテーブル席は、洒落た内装においても馴染みやすさを醸し出している。


高校生の頃から調理の道を志した坂野料理長。有名店、老舗ホテル、外食チェーンと様々な業態で修行を積んできた。個人店で腕を磨き、ホテルではチームワークを、外食チェーンではマネジメントと数値管理を身につけることができたからこそ今の自分、この店があると語る。


中国料理への想い
初めてメニューを見させていただいた時、四川料理専門店?と思ったのですが、『中国家郷菜』とはどのような意味があるのですか?
「調理の道一本で今まで来ましたけど、中国や香港の知り合いを訪ねて、今でも年に数回は旅を続けています。それが私の味の原点なんです。アジアの食文化は、まだまだ驚きがいっぱいあります。海外に行くことが珍しくなくなった今でさえ、行く度に新鮮な驚きを得ることができる、それだけ奥深いものなんです。だからこそ、私が感じた感動をお客様にも伝えていきたい。共感していきたい。そのために調理をしているようなものです(笑)。私の原点である中国、その広大な国土の各地に伝わる郷土料理・家庭料理・屋台の料理、そういったあまり触れられる事の無い中国の味を食べていただきたいと考えているのです。」そう熱く語る坂野氏。
なるほど!!誰もが知っている中華料理メニューとは一味違うメニュー、食材やスパイスが多様されているのはそういった理由なのだ。「ラム肉の串焼き王府井屋台風」「アオリイカと青野菜のバジル風味塩炒め」「有頭海老の塩水漬け マレーシアソース添え」等、他店では絶対に食べられないメニューであるが、地域によって異なる顔を持つ中国。これら上記の料理もれっきとした中国料理のひとつなのである。

食材へのこだわり
「美味しい料理を食べてもらうために、できるだけ良い食材で、できるだけ安く提供することが大切だと常に考えています。そのために高級素材、海鮮品など、仕入値が高くてもその季節の食材を使用したり、廃棄するよりは、価格を下げてでもお客様に食べやすい値付けをしたりしていますね。季節の香りのしない食材なんて食べるお客様ががっかりするだけだと考えているからです。」
本当にそうですよね。和食は季節を食べると言われたりしますが、季節を味わうのは和食だけではなく中国料理も同じはずですよね。
「そうなんです。中国四千年、医食同源と言われるように、季節の食材や、スパイス、ハーブの多様は当然のことなのです。とはいえ、辛さやスパイスだけが際立つような尖った味は好みません。食材の味を活かしながらも、それぞれの味が調和するような味こそが奥行きのある味を生み出すのだと思うのです。
例えばですが、だからこそうちの店で使う辣油は辛味だけではなく、油の甘みやまろかさを造る為に手作りしているんです。」
一つひとつの作業が味を造る
様々なこだわりを持って調理に向きあうことで、このような優しい味に仕上がっていくのですね。中華でイメージする味の濃さ、油っぽさ、化学調味料の後味といったものが感じることなく食べる事ができました。
「そうでうすか。それは私にとって嬉しい反応ですね。必要なだけの塩分は旨みと一緒に下味でしっかりとつけておき、後から加える調味料は最低限必要な味だけを加えています。」味の奥行きとは、ひとつひとつの作業を丁寧に行い味を重ねることで、こんなにも仕上がりに差が出る。そんな当たり前の事を改めて考えさせてくれる料理長のメニューである。
「とにかく美味しいものをお客様に食べていただきたい。そのために手間をかけ、丁寧に調理する。当たり前のことをしているだけです。」


      

 鹹菜脆皮鶏−香港式雛鶏の丸揚げ 揚げ高菜添え−
鹹菜脆皮鶏
クリックして拡大画像をご覧下さい


〈下茹で用〉
 
〈照り付け用〉
 
3000cc
50cc
紹興酒
300cc
水あめ 50cc
90g
50cc
桂皮
適宜
   
八角
適宜
雛鶏 1羽
四川花椒
適宜
揚げ油 適宜
長葱
適宜
高菜漬け 1枚
生姜
適宜
   
陳皮
適宜
   


1.雛鶏の血管等を取り除き、きれいに洗う。

2.下茹で用の材料を全て鍋に入れ、沸いたら(1)の雛鶏を入れ弱火にして煮る。
3.(2)をとり出し、照り付け用の水あめを塗る。

4.鍋に油を温め、吊るした(3)の雛鶏に油をかけながら火を通す。
5.高菜漬けをパリっとなるよう油で揚げる。
6.皿に(5)の高菜を盛り、カットした(4)の雛鶏を盛り付ける。



 麻辣金銭来肚 −トリッパの山椒と辣油の胡麻和え−
麻辣金銭来肚
クリックして拡大画像をご覧下さい


〈下茹で用〉   〈合わせダレ(1人前)〉  
トリッパ
1kg
香辣醤 2g
    豆辧醤 3g
3000cc
醤油 6cc
長葱
適宜
グラニュー糖 3g
生姜
適宜
10g
桂皮
適宜
辣油(手作り) 15g
八角
適宜
辣油粉 15g
    すり胡麻 15g
    香菜 適宜
       
 作り方 

(下準備)
トリッパは下茹で用の材料を入れ、柔らかくなるまで3時間程煮る。

1.合わせダレの材料をボールに入れてよく混ぜる。
2.
下茹でして冷ましておいたトリッパを短冊サイズにカットする。
3.皿に、合えた(2)を盛り付け、香菜を上にのせる。