煉瓦亭

荒井 重忠 チーフ

ポリシーは「美味しいものをお客様に」

明治38年銀座に創業。明治、大正、昭和、平成の4代100年以上続く煉瓦亭。「銀座に出かけるときは煉瓦亭にかならず立ち寄る」そんなスタイルを守り続けるファンも多い。煉瓦亭は、日本の成長と共にたくさんのエピソードが生まれた。それは100年以上もの長い間、お客様を第一に考えながらメニューひとつひとつ丁寧に作り上げてきた証拠である。まさに煉瓦亭が洋食の原点なのだ。


40年以上煉瓦亭で腕を振るっていらっしゃいますが、洋食の魅力とは何ですか?

荒井:洋食の魅力は、大人から子供まで誰でも食べられるという事です。一見、洋食は家庭でも見様見真似で作れそうな料理です。しかし、実際に作ってみるとレストランに出てくるようにはなかなか出来ないんですね。だから、私はお客様がわざわざ洋食を召し上がりに煉瓦亭へ足を運んで下さるのですから、精一杯心を込めて家庭では作れない味を出すよう努力しております。この道40年が経ちますが、私は洋食がとても好きです。若い頃、フレンチやイタリアンをやってみたいと思った頃もあります(笑)。でもだんだんと気持ちが整理され、落ち着いて食べられる洋食が自分にはいちばんだと思いました。

煉瓦亭ではどのメニューをいただいても、実に懐かしく心にしみわたっていく気がしますね

荒井:ありがとうございます。少し味を変えただけでも、うちをごひいきにして下さるお客様には、すぐ分かってしまうほどです。明治時代から親子代々続くお客様もいらっしゃいます。煉瓦亭の味には、多くのファンに守られているのです。だからこれからも私は、この煉瓦亭伝統の味を大切にしていきたいです。


木田 明利 オーナー

107年間日本の歴史と共に成長してきた煉瓦亭。洋食は煉瓦亭なしに語れませんね。

木田:日本で初めて洋食のジャンルを作ったのは煉瓦亭だと先代から聞いております。当初フランス料理店を開いたのですが、あまり日本の味に合わず売れませんでした。
そこで日本人の嗜好に合わせてフランス料理をアレンジしたのです。中でもヒットしたのが仔牛のコートレットを日本人向けに合わせたポークカツレツ。仔牛のコートレットは、日本人にはどうしても胸がやけるしつこいものでした。仔牛のコートレットをさっぱりさせるにはどうするか?そこでヒントにしたのが江戸時代に作られた天ぷら(精進揚げ)です。まず、牛肉を豚肉に、衣の粉チーズを卵に変えました。そして、生パン粉。フランスには、生パン粉はございません。実は、生パン粉は煉瓦亭で考えた残ったパンをきれいに使うための手段だったのです。残ったパンをおろし金で粗削りしてみたところ半生のパン粉ができました。それらすべてをあわせて天ぷらのように揚げてみたら、おいしくマッチしたのです。それからポークカツレツを筆頭にカキフライなどの揚げ物メニューが増えていきました。

揚げ物のレパートリーが広がるにつれて「揚げ物に合うソースはないか」ということを考えるようになりました。そこでデミグラスソースが誕生しました。当時、主食にはパンをお出ししていたのですが、お客様から「パンだけではお腹がいっぱいにならない、ご飯が欲しい」という声がたくさんございました。そこで「パン皿にパンではなく、ご飯をよそってお出ししよう」ということになり今のライスの形が誕生しました。そして今度は、「ご飯に合うソースはないか」ということで英国で生まれたウスターソースをテーブルにお出しするようになったのです。
その後、フランス料理であるグラタン・コキール・シチューを日本人向けに生クリームやスパイスを少なくアレンジしてメニューに加えました。明治38年日露戦争後、スペイン・イタリアにピラフなどのお米料理があることが分かりました。それらをもとに誕生したのがチキンライス・ビーフライス・エビライスです。また同時期、まかない料理で食べていたハッシュドビーフとライスを組み合わせたハヤシライス、オムライスもメニューに加えました。そして大正時代にはパスタ、昭和時代にはランチが新しくメニューに入りました。
こうして振り返りますと、明治45年頃にご飯・フライ・フランス料理を3つ合わせた洋食、つまり現在まで続く洋食の形が確立されたといえますね。



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洋食の誕生には、料理人の知恵と工夫がたくさん隠されていたのですね。それでは最後に洋食を愛する皆さんへメッセージをお願い致します。

木田:洋食という言葉は、西洋料理と書いてあるお店の看板を見たお客様が作った言葉です。それほど洋食は、みなさんから愛される庶民的な料理です。煉瓦亭は、みなさんに愛されたメニューを明治初期から現在まで変えなかったからこそ、今まで生き残れたと思います。100年以上愛され続けた煉瓦亭のメニューには何かがあると思います。
これからも末永くみなさんにお起こしいただけるよう、その煉瓦亭のメニューと味を守って頑張っていきたいと思います。

                                               
揚げ物を上手に揚げるには?

今回お店の看板メニューポークカツレツを参考に、揚げ物のコツを教えていただきました。


 

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作り方

<揚げ温度の見分け方>
パン粉を鍋に入れゆっくり広がっていく状態が
160℃。 このとき揚げる素材を入れるとよい。
パン粉を鍋に入れサッと広がる状態が170℃。
(揚げ際はこの状態で)
パン粉を鍋に入れすぐ色がつく状態180℃
(この状態では揚げ物がこげてしまいます)

途中で出た揚げかすは、こまめに取ることがポイント。きれいに色づきます。
<揚げ物を取り出すタイミング>
泡がだんだんと小さくなり、素材が浮いてきます。揚げ際に温度を170℃まで上げると、カラッと油切れがよくなります。

最後は、バットを用意して素材を立て掛けるようにおきましょう。そうすると余分な油が下に落ち、さらにカラッとおいしくなります。

鍋:なるべく大きいもの
きれいな油、量が多いほうがよい。
揚げ温度:160℃〜170℃