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―日本の文化ともいえる茶懐石ですが、後藤料理長にとって茶懐石の魅力は何ですか?
A:日本料理のうち、懐石料理というのは一部分です。今、焼肉懐石だとかフレンチ懐石だとか、懐石という言葉が一人歩きしてしま って、本当の懐石料理が理解されていません。千利休が四百数十年前に定めてから今日まで、お茶事にだされる懐石料理(茶 懐石)は長い歴史ともに確立されてきました。本物が知られていないということは、とても残念です。それに茶懐石は、敷居が高く あらたまって食事をするというイメージがとても強いのです。本当の茶懐石は、余分な装飾をしないシンプルなもの。私にとって 茶懐石の魅力とは、精神性がある・季節感と旬の味を大切にする・素材の持ち味を活かす・先走りしない・味付け盛り付けがシン プルということです。食べ終わりには、皿に何も残らないというマナーも好きです。茶懐石は、作る側・食べる側のお互いの精神を 大切にする料理なのです。 だから、私は、敷居を低くして若い人でもお友達同士でも気軽に来ることができる店、「龍雲庵」を開 きました。
後藤:茶懐石との出会いはいつですか?
―15歳の時、飛騨高山の「料亭 洲ざき」で修行をはじめました。ここは、茶人金森宗和の流れを汲む茶懐石“宗和流本膳くずし” を味わえる店です。宗和流とは、大名にお茶をたてる大名茶の流派。そして宗和流の食事は、本膳といって一の膳・二の膳・三の 膳・・・と10時間位かけゆっくりと食事を味わうマナー。その流れを汲みながらくずしたのが宗和流本膳くずしです。その後、私は 裏千家専門のお料理屋であります銀座辻留に入りました。ここは、千利休の流れを汲む精神性を大切にする茶懐石をおもてな す店です。辻留で料理を作っていくうちに、懐石料理は日本料理の中でも正しい料理なのではないかとだんだんと思うようになり ました。もちろん洲ざきでも茶懐石にふれていましたが新人の身でしたので、辻留で初めて茶懐石に出会った気がします。その 後、料亭胡蝶で料理長に就任し、茶懐石に近い形で、気持ちを大切にしながら、お客様にお食事をもてなして参りました。 |