金田中 草

清水 久雄 調理長

ポリシーは「楽しい料理を」

金田中 草のスタイルは草書体。伝統を大切に自在な創造を意味する。それを現すかのように店内の中心には草花が生い茂る。草の日本料理は、和の大皿を使い、初皿・汁物・造り・主皿・飯麺と五皿で完結させる新しいスタイルを提案。四季折々旬の素材を使った料理が、ゆっくりと堪能できる。
昼:昼膳 箱寿司2500円〜 月替りコース 5000円〜/夜:月替りコース 8000円〜、アラカルトも可


清水調理長様のポリシーをお聞かせ下さい。

私のポリシーは、料理だけでなく雰囲気をふくめたすべての流れなかで、楽しいものを作り出すということです。料理を食べる方も作る方も、楽しい気持ちでないとお互いにおいしいと感じるものは生まれません。仏頂面して食べる食事は、おいしくないですよね。楽しいことがいちばんのご馳走だと思っております。


清水様がおっしゃられるとおり、夜のコースのはじめに出てくる「初皿」は、旬の素材を季節の草木と共に供する十日替わりの前菜ということですが、いちじくやごま豆腐があったりと、メニューを見ただけでもワクワクしてしまいます。清水様が感じられる和食の魅力とは何ですか?

和食の魅力は、色彩感覚が素晴らしいということです。それは、日本には四季があるからです。四季のおかげで、冬になると根菜がおいしくなるというように、季節ごと旬の素材を味わうことができます。そして、日本の暦には、七五三などの催事があります。季節ごとの旬の素材をとりいれ、その日その日の催しを料理にとりいれるだけで自然と和食はできあがってしまうのです。

鴨と水菜のはりはり鍋粟麩一味

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里芋霰揚 蟹あん掛

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洋食は、ソースや素材いろいろなものをたしてひとつの料理になります。逆に、和食は、たくさんある素材を削ってまた削ってとできあがる料理です。つまり、和食は、中心となる素材に、何か違うものをひとつふたついれただけで仕上がってしまう素材を大切にする料理なのです。また、日本には全国にたくさんの窯元があります。器を見て「この器には、この料理を盛ってやろう」という気持ちに自然となるんですね。私は、日本人ほど感性豊かな国民はいないと思っています。


今回、霜月のお献立の中から3品ご紹介頂きました。実に、趣のある美しい料理ですね。

ありがとうございます。どれも旬の素材を最大限に活かした料理です。金田中 草では、伝統の味を守りながら、かつ、新しい感覚を和食の中にとり入れたいという試みで、五皿完結という洋食の流れを汲んでいます。でも、実は、この五皿という数は、日本の昔から続く食卓「一汁三菜」の形でもあるのです。

昔の家庭の朝食は、たとえ残りものであっても、5・6品が食卓にあがったものです。飽食の時代となった今、ご飯と汁物のある昔ながらの食卓の形が、残念なことに、忘れ去られてきているのかもしれません。以前、コース料理の中で土鍋で炊いたご飯を釜ごとお客様の前でおだししたことがあります。お客様にとても好評でした。今の世の中では、炊きたてのご飯をゆっくりと味わう時間も、少なくなってきているのかもしれませんね。銀しゃりという言葉があるように、炊きたてのご飯は、なにもしなくても輝いていて、とてもおいしいものです。古き良き日本の食文化が消えないよう、これから和食素晴らしさを伝えていくのは、私達料理人のつとめかもしれません。


やはり、お米のおいしさをわかるのは日本人だと思います。「日本人の米ばなれ」という言葉を耳にしますが、悲しいことですね。清水様の和食を大切になさるお気持ちが伝わってきました。それでは、最後に、清水様のこれからをお聞かせ下さい。

これからも、自然体でやれればいいと思っています。気張ると基本を忘れてしまいますから(笑)。季節を感じながら、これからも和食を作りつづけていこうと思います。

菊子竜田揚

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鶏肉鍬焼


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材料 1人分

鶏もも肉

1/2枚

大根

適宜

水菜

適宜

片栗粉

少々

サラダ油

適宜

合せ地

 

70cc

味醂

55cc

醤油

25cc

長ネギ(みじん切り)

7cm

生姜(みじん切り)

10g

作り方

1.鶏肉は一口大に切り、片栗粉をつけ、フライパンで油焼きする。
2.大根は、2cm位の長さの拍子切りとし、水にさらしてから水気を切っておく。水菜は3cmの長さに切りそろえておく。
3.フライパンに合せ地を入れ、鶏肉を煎煮する。
  <ポイント>ころがすように、合せ地をからませるようにする。
4.大根を敷き、3.をのせ、水菜を飾る。


調理長のアドバイス

大根のかわりにキャベツにしても良いです(季節の野菜でアレンジ可能)。 栗や葡萄を上から散らせば季節を感じられます。
季節のものをとり入れると、ひとつの話題になり、食卓が楽しくなりますよ。