聖庵 阿佐ヶ谷店

代表取締役 中井 健人 

噛むほどに深い味わいを感じる素朴で力強い天然酵母パン、ついついゆっくり長居したくなるようなアットホームなカフェスペース。2011年8月にOPENした聖庵 阿佐ヶ谷店、早くも地元阿佐ヶ谷の味、憩いの場所として定着しつつある。

天然酵母パンの魅力に惹きつけられ、「本物のパン」の味を伝えていきたい…と熱い思いで出版業の傍ら聖庵をOPENした中井 健人さん。出版業と街のパン屋さん…ちょっと変わったご経歴をお持ちの中井さんにお話を伺いました。


こだわり抜いた天然酵母

「当店のウリは天然酵母パンです。ただ天然酵母を使っているだけでなく、パンの種類や味、さらには素材の特徴にあわせて「丹沢酵母」「白神酵母」を使い分けています。ほかにも、フリュイやクヴェールなどでは当店独自の酵母を使っています。」


なぜ天然酵母にこだわるのか

「それはやはり「美味しさ」です。イーストには絶対に出せない独特のコクと味わい深さといっていいでしょう。当店の商品は、添加物がほとんど入っていません。たとえば、一番人気の「田舎パン」ですが、使用しているのは小麦と酵母と三温糖と塩と水だけです。たったこれだけの材料ですが、味も香りも深く濃いものに仕上がっています。その他の商品も同じように、ほとんど天然素材だけでつくっています。添加物を使わなくても、美味しいものは実現できるわけです。 天然酵母パンは製造するのに手間がかかります。しかも、いい味を出すにはさらに工夫が必要です。でも、だからこそ“美味しい”のだと確信しています。食べるもので体はつくるられる、だから毎日口にするものはできるだけ無添加の安心出来るものを選んでいただきたい、その一心で頑張っております。 イーストのパンは仕込みから2時間半から3時間で焼き上がるのに比べ、天然酵母は非常に手間と時間がかかるうえ温度や湿度の管理も難しいのですが、この長い発酵時間が奥深いコクや独特の風味を生み出しているのです。」と中井さん。大学を経て、出版社を設立され運営されてきた中井さん、どうしてパン屋をOPENされたのですか?


「なぜパン屋なのか?とよく言われます。その背景にあったのが出版の未来でした。ご存知の通り、ネットの普及や活字離れなどで、出版は非常に厳しい状態にあります。これは大手であろうと中小であろうと同じ状況です。日本における出版という、特殊なビジネスモデルはもはや成立が難しくなっているのです。そこで、なんとか「出版」という業務の原点に立ち返るために、「もう一度生産の現場に戻ろう」と考えました。丁寧にモノをつくりそれを販売して消費者に届け、さらに消費者からの反響を得てモノをつくるという一気通貫の循環でとらえて新たな地平をつくっていくという仕組みに戻らなければいけないと考えました。まだまだ日が浅く目に見えない障害もあるでしょうが、何とか乗り越えていきたいと考えています」

「天然酵母のパンの味をみなさんにさらに知っていただき、ご意見を取り入れながら、いいパンづくり、いい店づくりに努めていきます。地元阿佐ヶ谷に根差し、美味しいパンとそれを介した新しい食生活の提案、さらにみんなが気軽に集える親しみのある空間づくりができるカフェベーカリを目指していきます。」

古代パン

表面サクサク、中はモチっとしたクロワッサン

パンの個性にあった天然酵母を使い分けています

いろいろな楽しいパンの種類

田舎パン
材料

強力粉

100 %

300g

天然酵母生種

6%

18g

砂糖

6%

18g

1.5%

4.5g

56%

168g

(%表記は粉に対しての割合を示しています)

※各材料はあらかじめ計量しておきます。強力粉はふるわなくても大丈夫です。

作り方
ハードタイプのパン

強力粉、砂糖、塩をボウルに入れる。水と生種を加えながら素早くかき混ぜる。(水は一度に全部入れず、加減を見ながら)

指と手のひらを使 ってダマをつぶすように やさしく素早く混ぜる。まとまったら台の上に取り出す。

台の上に打ち粉をし、生地をよくこねる。[こねあげ]の目安は生地を伸したとき、指が透けて見える程度。生地を丸めボウルに入れる。

(一次発酵)表面が乾燥しないようにラップをかぶせ、発砲スチロールの箱 に入れます。12時間程で一次発酵完了。目安は4倍の大きさになればOK

作りたいパンの大きさにスケッパーでカットする。生地の表面が滑らかできれいな張りを持つように丸める。

「ベンチタイム」オーブンシートをしいた天板の上に置きキャンバス地をかぶせ30分ほど生地を休ませます。30℃くらいの室温で30分間が目安(温度が高すぎると 発酵過多になる)

ベンチタイムでゆるんだ生地を片手に乗せ、もう片方で側面の生地をひっぱり裏側でとじる。とじ目を下にして丸く形を整えたら更に発酵させる。最適温度30℃湿度70%〜80%で約1時間。

表面が乾燥しないよう霧を吹き2倍にふくらむまで発酵させる。生地がしっとりするまで霧を吹き、パン生地が膨張するとき割れないよう生地表面に切り目を入れる。

あらかじめオーブンを200℃に温めておき200℃で15分間焼きます。焼き上がったら金網などの上でゆっくり冷やし粗熱をとる。

おめでとうございます。完成です。ちょっと置いて室温になったぐらいが食べ頃です。


編集後記

聖庵さんの田舎パンは、軽くトーストすると風味が格段にUPします。
あまり日持ちしない天然酵母パンですが、一枚づつラップにくるみ冷凍しておけば長持ちしますよ!