吟遊詩人

清澤 稔 代表

荻窪駅から徒歩数分、住宅街の一歩手前にあるパンと菓子の専門店「吟遊詩人」。
入口を入ると、ショーケースの向こうから「いらっしゃいませ!」と温かい笑顔が出迎えてくれる。
やわらかい雰囲気に包まれている店内は、いつも香ばしいパンの香りが立ち込めている。

「吟遊詩人」の代表を務めるのは、パンづくり一筋の職人、清澤 稔さん。
小学校の頃に漠然と抱いたパン職人になるという夢。その夢を追いかけ現実のものとした今でも、
美味しいパン作りのため、日々試行錯誤を繰り返す。
「地域のお客様を大切に、いつまでもこの街でパンを作り続けたい」とパン作りへの思いを語ってくれた。


気取らないベーカリー 吟遊詩人

詩人とは、中世ヨーロッパで恋愛の歌や庶民的な歌を歌いながら各地を遍歴した芸人のこと。ムーミンに登場するスナフキンのようなイメージの店名には、清澤さんの思いが込められている。 「私にとって好きなことは、パンを作りお客様に喜んで食べてもらうことです。私自身詩を書くということもあるのですが、独立したら店名は親しみやすい日本語にしようと思い、吟遊詩人としました」 清澤さんの作り出すパンは、毎日でも食べたくなってしまう手が届きやすいものばかり。 「私は独立するにあたり、かっこいいからあのお店に行ってみようという店ではなく、美味しいから、安心して食べれるから、毎日食べたいから・・・そういう気持ちでお客様が足を運んでくれるパン屋を作りたかったんです。だから洒落っ気よりも、素材に徹底的にこだわり、お客様の期待を裏切らない美味しいパン作りにこだわっているんです」

パン作りは面白い

ショーケースにはバゲット、ぶどうパン、お惣菜パン、マフィンやスコーンなど常時40種類ぐらいのパンが並ぶ。これだけの種類を一人で作る清澤さん。パン作りの面白さについて聞いてみた。
「洋菓子作りが美術だとすると、パン作りは化学の世界ですね。パンは粉にいろいろな材料を組み合わせ、練り上げ、発酵させ、焼きあげます。天候や季節によって左右されることもとても多く、粉の収穫時期で水分吸収も違うんです。毎日生地と対話をしながら、焼きあがる姿をイメージし、パンを作っています。大変な部分もありますが、どうやったら美味しいパンが焼きあがるのか?という視点からパン作りを捉ると、いろいろな面白さがありますよ。でも、この面白さがわからないと続けてゆくのは難しいかもしれませんね」 常に探究心もち、仕事に取り組む清澤さん。その思いが日々美味しいパンを作り出している。


定休日のないパン屋さん

「吟遊詩人」のショップカードを見ると定休日が書いていない。
「定休日ってお客様が望んでいることではないと思うんです。お店が休みでもパンを食べたいお客様がいるかもしれない。私は自分のパンを食べてくれる方を大切にしたいので、休みは設けていないんです」
毎日通ってくれる常連さんも多い「吟遊詩人」。取材中もお客様との楽しい会話が聞こえてきた。
「お客様との間に商品を置くと、お客様と会話ができるんです。今日のおすすめやパンに使っている素材の話など。ほんの数分ですが、私にとってはお客様との大切な時間なのです」
お客様への思いを真摯に語る清澤さん。体力が続く限り、美味しさにこだわりパンを作り続けたい。


バナナマフィン
材料(5〜6個分

ばななマフィン(荻窪・吟遊詩人)
クリックして拡大画像をご覧下さい

薄力粉

100g

ベーキングパウダー

小さじ1

無塩バター

70g

ビートグラニュー糖

70g

ひとつまみ

1個

バナナ

1本

 作り方 

1.バターにグラニュー糖を加え、なめらかになるまで混ぜ、割りほぐした卵を2〜3回に分けて加える。
2.つぶしたバナナを加え、混ぜ合わる。
3.振るった粉とベーキングパウダーを加え、練らないように混ぜ合わせる。
4.マフィン型に入れ、180度に温めたオーブンで15分程度焼く。





シェフの一言こぼれ話
「吟遊詩人」の看板商品が、パンの中でも最も作るのが難しいといわれるバゲット。清澤さんが作るバゲットは、ぱりっとした皮に職人技がひかる。
「バゲットは私が一番好きなパンなんです。シンプルな配合で作るゆえに美味しさの違いがはっきりとわかります。職人の腕の見せ所ですね。私の師匠がランスパンの職人だったこともあり、バゲットを作っていると厳しい師匠がそばにいるような気がするんです。バゲット作りには、やはり一番力がはいります。」